わが北鎌尾根、剱岳よ おちこちの山   楽山社

第2部 劔岳鑽仰(サンギョウ)
        (E872)


   古代剱岳に懐う
     (タチヤマ)
                        白川  長


 万葉の昔、大伴宿禰家持、越中国守となる(天平十八年)。
 中央政権(平城京)から遠く離れ、北国に赴く大伴氏族の嫡流家
持の心情や哀れ!
 かつて「大君の醜の御楯」の家訓を守り、代々大君の信任厚く、
祖父、安麻呂、父旅人、共に大納言に遇され国政中枢参与の栄に輝
く。いま我が身は如何。
 雲はるかな神ながらの立山(剱岳)を望み、心鎮める家持の懐い
              (タチヤマ)
によせて作れる歌二首

  白川 真佐留

 越の野に霞たなびき家持の懐いこめたる都なるあから橘(橘諸兄)

 かざさむと思ほゆ願いふじ(藤原仲麻呂)からみ心乱れも神さび
て高く貴き立山(剱岳)の雲の高根に心鎮める。


  反 歌
    家持の都し思ほゆいらるれば、
      立山(剱岳)の峰雲ぞたなびく